ラノ・カウなど

Rano Kau

 
第二日

早朝に起きて島の西にある大きなカルデラ、ラノ・カウに歩いて行くことにする。


ハンガロアの小さな村をぬける。南太平洋の波が海岸の崖に打ち寄せている。自然のままの荒々しい風景が拡がっている。右写真のあたりから登山道になる。


登山道から東を見る。すぐ下に空港の滑走路がある。この島にしては大きく立派な滑走路である。これは、スペースシャトル緊急着陸用に併用する目的で建設されたためこのような規模になったという。まだ一度もスペースシャトルが使用したことはないが。空港の向こうにはハンガロアの村がこじんまりと見える。


およそ1時間の登山で頂上に着いた。そこからラノ・カウのカルデラが一望できる。直径が2キロメートル以上あると思われるきれいな円形をしていてその底は平らで湿地帯になっているのか多数の水たまりが見える。カルデラの上から底までは急峻な崖になっている。そのすばらしい景色に息を飲んだ。


カルデラの周囲を歩いてオロンゴという遺跡に行く。ここは、島民が昔鳥人信仰をした遺跡である。眼下の海に小島が見える。
鳥人は、この崖から海に飛び込んであの島まで泳ぎそこにある海鳥の卵を取ってくる儀式があったという。このあたりの岩には図案化された鳥や鳥人などが刻まれている。その貴重な遺跡が囲いも説明もなく自然のままに放置されている。


写真に写っているのは、ドイツ東部から来た青年で二人でレンタカーで島内をまわるという。彼らの車に乗せてもらうことになった。



山を降り、西海岸へ。ここに
倒壊したモアイとその台座(アフ)を見る(左写真)。このアフが有名なのは、その石組みが精巧に出来ているためである。ヘイエルダールは、この石組みは南米インカの石組みの技術に酷似しているとして、イースター島の島民が南米から来たという仮説を立てた。それを証明するために筏船「コンチキ号」で南太平洋を渡る冒険もしている。ただ、この説は今では支持されていない。

イースター島の島民はポリネシア人で紀元500年頃タヒチ方面からここに来たとされている。それも、一回来ただけで、その後他の地域と交流した形跡がないという。その島民がなぜモアイを造りその巨大な石像を運んだかは大きな謎である。



島の南海岸をドライブする。明るい太陽の下、荒波が打
ち寄せる岩の海岸が続く。途中数個のモアイが倒壊しているのを見る(右写真)。あまりにも無惨な姿に憂鬱な気分になる。
イースター島が1722年にオランダ人によって発見されたときには多くのモアイは立っていた。その後半世紀経って、キャプテン・クックがこの島に上陸したときにはモアイは引き倒されており立っているものは無かったという。その半世紀の間に何が起こったのかは記録が全くない。おそらく、島内で戦争が起き相手のモアイを倒す、倒し合いがあったのではないかとされている。イースター島民がオランダ人と出会ったことが何らかの引き金になったのだろうか?謎である。


海岸に15体のモアイが立っているのを見る。ここはトンガリキである。日本の協力で再建されたものだ。この後、モアイの誕生したラノ・ララクに登る。このあたりは後日もう一度来ることになるので説明を省略する。







最後に、モアイの赤い帽子の産地に行く。すべてのモアイ本体はラノ・ララクという火山で造られたが、帽子はそこから10キロメートル以上離れた島の東南部のプナ・パウで造られた(左写真)。モアイの上にこの赤い帽子をのせるためには、運搬に加えてさらに複雑な作業と労力が必要だったであろう。


夕闇が迫り、昨日来たタハイのモアイに寄る。その前が賑わっている。見ると、ヨーロッパ人のご夫婦の金婚式(?)が始まる。その二人を囲んで島の若者達が儀式をした後に踊りを始めた。その中にいる奥さんは、「ロマンチック!」と感激している。

水平線に真っ赤な太陽が沈んでいくところだ。幻想的である。ふと見ると、日本人のテレビカメラマンがこの風景を撮影中である。テレビの番組間に使う映像だそうである。


ハンガロアに戻り、海に突き出たレストランでドイツ青年ともども食事をした。彼らは明日島を離れチリの最南端まで旅行に行くという。最後に、英語がにがてだった方の青年が私を抱いて挨拶してくれた。ほろり。

(後日談。その後私が撮影した写真を彼らに郵送した。そのお礼に手紙をくれた。彼らはイースター島からサンチャゴに行ったが、そこでカメラを盗られてしまった。そのためイースター島の写真は私の送ったものだけだと感謝していた。なお、9月11日のすぐあと心配して手紙をくれた。)

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