中国・遼寧省・錦州(きんしゅう)と葫廬島(ころとう)

                                                    森谷 東平 Moritani Tohei

 

錦州と葫廬島は、旧満州に移り住んだ百数十万人の日本人のうちおよそ百万人が終戦後艱難辛苦の末故国をめざして滞在した土地である。その意味で引揚者にとって忘れがたい土地である。 私は錦州の生まれで終戦の翌年に二歳で引揚げたが、 そうした私ですら成人してから事実の片鱗を知るのみであった。日本の歴史の教科書にさえ触れられないというのが不思議でならない。


1996年(平成8年)10月に、錦州市のシンボルである「古塔」の修復記念式典が催され、それに「錦州会」の団員として参加した。この半世紀、国交の無い時代も長く文革や天安門の悲劇で揺れ続けた中で、生まれた土地を訪問できる日が来るとは思われず、今回の訪中は強い感銘を受けた。